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我が国は世界で最も高齢化が進展し、健康寿命の延伸を目指したフレイル対策は極めて重要な課題です。フレイルに陥って生じる難治化した褥瘡やスキン-テア(皮膚裂傷)への対策は十分でしょうか。とくに、スキン-テアは強い痛みのため日常生活のQOLが著しく低下するばかりか紫斑を伴うことから虐待と誤認されるため、その栄養対策が急務とされています。診療報酬においても褥瘡アセスメントの危険因子のなかに新たにスキン-テアの評価項目が追加され、すべての医療機関においてスキン-テアの評価と予防を講じることが求められましたが、効果的な栄養療法は明らかとされていません。最近になり、加齢に伴って減少する細胞外マトリックス成分、およびその増加を担う線維芽細胞を活性化するコラーゲンペプチドを用いた皮膚状態の改善への研究が行われています。また、褥瘡とスキン-テアに共通した対策として、フレイル対策に効果を上げてきた栄養療法はこの予防と治療の主翼を担うものです。 フレイルの病態を改善する因子として除脂肪量が挙げられ、この維持・改善に着目した栄養療法の開発が進んでいます。同じく、褥瘡をはじめとした創傷治癒遅延の一因として除脂肪体重(LBM)減少との関連が報告されています。LBM減少率10%未満では経口摂取に由来した蛋白質は優先的に創傷治癒に利用されるが、20%程度までLBMが減少した場合には経口摂取由来の蛋白質は創傷治癒のみならず、LBMの維持にも同等に利用されるため創傷治癒が遅延することが知られている。さらに、30%以上のLBMの減少時、すなわちNitrogen Deathと呼ばれる生命が脅かされている状況下では、経口摂取した蛋白質は完全にLBM維持に利用されるためLBMが一部回復するまで創傷治癒は必然的に停止することが知られています(Robert H,2009)。したがって、創傷分野における栄養療法を考えるうえではLBM維持・改善を目指すことが肝要となり、蛋白異化を伴う侵襲制御とともに蛋白同化を促進させるうえで必要となるエネルギーやたんぱく質、微量元素、ビタミン、さらには特定の栄養素を駆使した適切な栄養補給こそが、フレイル対策の戦略につながります。
【目的】褥瘡を有する患者には、必要十分な蛋白質とエネルギーの投与が大切であるが、そのうえで特定の栄養素を栄養管理に取り入れることで、さらなる創傷治療促進へつながることが期待される。今回、コラーゲンペプチドを高含有する濃厚流動食リカバリーK5の有用性を検討したので報告する。 【方法】対象は褥瘡を有する経管栄養施行患者。リカバリーK5を8週間(1000~1600kcal/日)投与(リカバリー群)し、投与前後に各種栄養指標及びDESING-Rを調査した。一方、同期間にその他の栄養剤にて栄養管理を実施した症例(対象群)との比較検討を行った。褥瘡は感染兆候なく、壊死組織がほぼ除去できた状態を条件とした。 【結果】リカバリー群(11名男性1名、女性10名、平均年齢77.3±11歳)、対象群(11名男性5名、女性6名、平均年齢81.5±7.0歳)。DESING-Rの合計スコアは、リカバリー群14.5±4.1点→11.9±4.2点と有意に改善した。対象群では19.4±8.8点→17.0±8.5点と有意差はなかった。血液指標(TP、Alb、Hb)ではリカバリーK5群は有意な改善が見られたが、対象群では有意差はなかった。 【結論】「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」において、褥瘡患者に対する特定栄養素としてコラーゲンペプチドを補給することによりDESING-Rが有意に改善したエビデンスが記載された。リカバリーK5はコラーゲンペプチドを高含有しているほか、蛋白質が多く配合され、さらには免疫能向上が期待できる乳酸菌E・フェカリスを含有するなど、様々な有用性が期待できる濃厚流動食である。研究によりリカバリーK5が有意に褥瘡治癒に貢献していることが判明したが、翻って褥瘡患者は低栄養状態で免疫抵抗力が落ちていることからも、本剤が創傷治癒のみならず全身状態の向上に対して有用で、安全に使用できると考えられた。
【目的】遷延性意識障害により自力での体動が困難な患者に対し、看護チームで褥瘡対策に取り組んできた。重度褥瘡を有する患者に於いて、褥瘡発生要因に着目した仰臥位でのポジショニングの効果を報告する。 【方法】対象;70歳代 男性 交通事故による頭部外傷後遺症、重度の意識障害。自力での体動不可。臀部や仙骨部に骨突出あり、関節拘縮や筋の緊張による上下肢の屈曲と円背姿勢のためマットと身体の接触面が少ない。入院時、仙骨部に重度の褥瘡ありDESIGN-R40点であった。実践内容;高機能マットレスの使用。適切なポジショニング枕の選択。仰臥位時、姿勢の崩れによる圧迫・せん断力による摩擦・循環障害(阻血)を起こさないためのポジショニングとして上肢に枕を挟み支持面を広くする、膝部の屈曲位により両下肢が接地しないため重さのあるビーズ枕をひざ下に挿入し支持面を広くして安定させることを行った。褥瘡処置はイソジン消毒、洗浄、ユーパスタ塗布し創傷被覆材の貼布を継続した。 【結果】高機能マットレスを使用することでスモールチェンジが可能、仰臥位のポジショニングであっても自重圧の解放が可能となった。体型や姿勢にあわせたポジショニング枕を選択し使用することで、支持面が広がり筋の緊張が緩和され、リラックスして安定した姿勢を保つことができた。また、下肢には十分な重さの枕を使用したことで姿勢の崩れをなくし、褥瘡部位への摩擦を防ぐことができた。DESIGN-R40点(入院時)→19点(入院後半年)→7点(入院後1年)→3点(入院後2年)。癒着性イレウスを発症し体調不良となり、治癒過程が滞る時期があったが、ピンホール大の潰瘍面を残す程度の褥瘡を有し、退院となった。 【結論】ポジショニングの基本を実践したことで不安定な姿勢から、アライメントの整った安定した姿勢を保つことができた。姿勢の維持・安定が褥瘡治癒過程の一助となったことが示唆された。
【目的】特定行為研修修了以前は皮膚・排泄ケア認定看護師として、組織横断的に活動を行っていた。20XX年に特定行為研修創傷管理区分の研修を修了し、特定行為実践を開始した。3年間の活動実績は、褥瘡や慢性創傷に対する延べ1000回を超える特定行為を実践し、安全かつ適確に実践するための環境を整備した。本報告は、特定行為の実践症例を元に、特定行為研修修了前・後における看護実践の変化について考察する。 【方法】症例A・Bの介入を振り返り、特定行為研修修了前・後の介入について、入院時と6カ月後のDESIGN‐R評価と特定行為実践について比較・分析する。 【結果】症例Aの介入はX年から6カ月、入院時DU-e3s8i0G6N3p0:20点、6カ月後D4-e3s12i0g3n0p0:18点。医師によるデブリードマンは延べ8回実施した。創部状態は褥瘡回診で確認し、医師が決定した処置内容について、適宜病棟看護師に説明・指導した。症例Bの介入はY年から6カ月、入院時DU-E6S15i0G6N6p0:33点、6カ月後d0-e0s0i0g0n0p0:0点。特定行為実践は、デブリードマンは延べ25回、局所陰圧療法は20回実施した。指導医と頻繁に創部の評価・ミーティングを行い、適宜処置内容を変更、実施した。また、多職種参加の症例検討時には臨床推論を活かし、医学的視点をもとに意見交換した。病棟看護師との連携は、創部の状態やケア方法、医師の判断、方針を情報共有し、看護師のスキルアップを図った。 【結論】院内で特定行為研修修了者の活動が認知されたことや病態判断能力の向上により、医師や他職種とのコミュニケーションの機会が増加し、チーム医療における連携調整の役割をより一層発揮できるようになった。手順書に基づくタイムリーな実践と臨床推論に基づく的確な特定行為を実践することにより、創部の治癒促進に繋がっていることが示唆された。
当院は神経難病の患者を多く受け入れており、日常生活自立度C1以上の患者が入院患者の約8割を占めている。除圧・耐圧分散に介助を要する患者が多いため、看護・介護スタッフ(以下スタッフ)が正しい知識と技術で基本に則した適切なポジショニングを実践しようとする意識が必要である。しかし実際には効果的でないポジショニングを見ることが多い。このため現状を把握し、今後取り組むべき課題を発見することを目的に以下の取り組みを行った。 【方法】拘縮が高度でその患者個人に合わせた枕等を配置することが必要な患者(以下高度拘縮患者)を各病棟3名ずつ計9名、一般的なポジショニングを行う軽度拘縮患者を病棟7名ずつ計21名選出した。高度拘縮患者は、その患者個人用ポジショニングとポイントを記載されているものをベッドサイドに掲示した。評価は当院の褥瘡委員会で検討し作成した10項目のチェックリストからなる体交ラウンドシートを用いた。結果を配布し当院体位変換マニュアルに沿ったポジショニング方法を研修した褥瘡対策委員がスタッフにマンツーマン講習(以下講習)した。 【結果】評価結果を病棟に掲示したが、その後の再評価は下がっていた。そのため講習を行ったがその後の評価も期待するような良い結果ではなかった。しかし、高度拘縮患者はベッドサイドに解説を写真で表示したことでスタッフより適切且つ短時間で行えたと意見があった。 【結論】高度拘縮患者・軽度拘縮患者のポジショニング講習を行い実践内容を把握していても、スタッフは繫雑な時が多く、効果的なポジショニングが行われていない現実があった。しかし、ベッドサイドに解説を図示することで改善があり、評価の回数を重ねるごとに可否では表せない改善も実感した。体位変換やポジショニングに関する意識的な働きかけを行うための研修を今後は検討していきたい。 倫理的配慮:個人が特定されないように配慮した。
【目的】当院の褥瘡対策委員会は月1回開催し、形成外科医師と褥瘡回診を行っている。委員会では、毎月の褥瘡発生率と保有率の報告や創傷被覆材・薬剤の検討、体圧分散マットレスの検討など行っていたが、リンクナースの褥瘡対策に対する積極性が低かった。2019年からWOCナース(以下WOCN)が委員長となり、委員会の内容を見直し、教育を行ってきた。2023年5月までの4年間の活動を振り返り、現状を分析し課題を抽出、リンクナースが役割を果たせるような教育を考える。 【方法】委員会の活動内容を振り返り、クロスSWOT分析を実施し課題を抽出、リンクナースが役割を果たせるような対策を立案する。 【結果】機能評価受審へ向け現状のマニュアルの修正やモバイル端末を使用した褥瘡画像管理のレクチャー、WOCナースが褥瘡回診時にスタッフと一緒にDESIGN-R2020評価を行う、E-ラーニングを活用しDESIGN-R2020や薬学的管理に関する事項・栄養管理に関する事項の配信、繰り返しDESIGN-R2020を使用した症例学習を行うことを対策案とした。また、NSTとの合同委員会への再編成の提案や形成外科医・皮膚科医の仲介をWOCナースが担い、現場スタッフの混乱を回避する、リンクナースの数を増やしたり、交代する方法の変更なども看護部へ提案していくことを考えた。NSTと合同になることで、管理栄養士や薬剤師へ褥瘡対策診療計画書記載の業務分担や症例検討の際に多職種から専門的助言を得ることも可能と考えた。 【結論】委員会の強みや弱みを理解し、考慮したクロスSWOT分析を実施し、課題を抽出・対策を立案することでリンクナースの褥瘡対策に対する積極性を上げ、リンクナースとしての役割を果たせるよう教育可能であることが示唆された。
当院では過去、創縁を寄せてテープ固定するという“テープ寄せ”の有用性を報告してきた。本法により創の縮小はもとより創面の挫滅を予防でき、さらには滲出液を減少させることができる。今回その経験を示すとともにテープ寄せのノウハウを教示する。 【テープ寄せの方法】創縁を用手的に引き寄せて、カブレステープやエラテックステープ、マルチポアテープ等で固定した。創面が極力隠れるように十分に創縁を引き寄せて固定することがポイントである。連日の処置は、滲出液で汚れていたら濡れたガーゼで拭く程度とし、テープが剥がれかけていたり汚れがひどくなるなどの問題なければそのまま貼り続けた。 【研究】1)テープ寄せを行った症例を連日観察し、その効果や合併症を調査した。2)浸透圧吸水性創傷被覆材オスモパッドを用いて、テープ寄せによる滲出液の減少効果を調べた。 【結果】1)2013年以来、200カ所以上の褥瘡にテープ寄せを行った結果、重大な合併症が生じた症例は無く、多くの症例で満足すべき効果があった。合併症として、テープかぶれ等があったが、貼付する位置を変更したり、ポリウレタンフィルムを貼付すること等で対処できた。 2)テープ寄せをしなかった群の滲出液7.5gに対して、テープ寄せをした群の滲出液1.8gと有意(P<0.01)にテープ寄せ群が少なかった。 【考察】テープ寄せによって創面は縮小し、肉芽組織が癒合する傾向がみられた。また創面を露出させないことから創の挫滅を防ぐことができ、さらに滲出液を減少させることがわかった。本法は手技が容易で、種々の利点があることから、褥瘡を扱うスタッフが知っていてよい優れた方法と考える。 参考書:水原章浩:これぞ究極の褥瘡・創傷ケア~目からうろこのあっと驚く工夫と秘訣-心得シリーズ9:医学と看護社
【目的】糖尿病患者の難治性足潰瘍では7~20%が下肢切断となる。糖尿病患者の右足部の広範囲な難治性皮膚潰瘍に対して切断を考慮されたが、実施せずに救済できた症例を経験したので報告する。 【方法】60歳代 男性。2016年6月にHbA1c:12.1%で当院にて糖尿病治療を開始した。血糖コントロールは良好であったが、2019年8月に右足外果に小さな皮膚潰瘍が生じ徐々に潰瘍面積が拡大した。当院の褥瘡治療チーム、WOCナースも介入し、末梢動脈疾患なし、Wagner分類:Grade2、軽症の感染状態にて潰瘍のDESIGN評価を行いつつ外用薬により治療したが難治性であった。2020年2月に外科的デブリードマンにて感染制御した後、陰圧閉鎖療法(VAC)、遊離植皮、トラフェルミン投与したが無効であった。2020年9月に潰瘍からの異常出血を生じ、感染の再燃と思われる炎症所見を認め、3回の外科的デブリードマン後、出血は増悪し、潰瘍は右足背全体に拡大した。2022年12月より数日毎に輸血し、2023年5月までにRBC 88単位を使用した。凝固・血小板異常もなく、出血・感染コントロールに難渋したため、下腿切断を提案したが同意が得られず、輸血と外用薬治療を継続した。他の潰瘍性疾患として皮膚悪性腫瘍や動静脈奇形は否定的であった。 【結果】潰瘍が増悪した時は壊死性膿皮症の皮膚潰瘍に酷似しており、ステロイド外用剤と膿苔に対しポリヘキサニドを用いた創洗浄を適宜追加して潰瘍処置を継続し、最終的に完全な上皮化が得られ下腿切断を免れた。 【結論】本症例では糖尿病治療は良好であったが難治性皮膚潰瘍の治療に難渋した。鑑別疾患として皮膚悪性腫瘍や血管炎病変は否定的であったが、感染制御のための外科的デブリードマンが潰瘍増悪の引き金となり、増悪した時期では壊疽性膿皮症に酷似していたため、鑑別疾患として考慮すべきと思われた。
看護師がエコーを活用する価値は、褥瘡ケアにおけるDTIの疑い評価や、排泄ケアにおける残尿及び便秘の評価、血液透析の穿刺支援など、多くの領域で明らかになっています。今回のハンズオンセミナーでは、エコーをまだ使用したことのない看護師を対象に、エコープローブの持ち方、実際の当て方、対象物の描出方法などを血管やモデルを用いて体験できます。 現在、東葛クリニック病院では看護師の約30%が、日々の診療介助やケア実践の際にエコーを活用できるようになりました。これは、臨床検査技師、超音波検査士、臨床工学技士たちの忍耐強い指導の賜物です。彼らは、看護師がエコーを使用する際に直面する課題や障壁を理解してくれています。今回その指導者たちが集結し、ハンズオンセミナーをおこないます。 看護師がエコーを活用するためのファーストステップとして、また、すでにエコー実践者にとっても、後進の育成に必要なステップを学ぶ場として有意義なものになるよう準備しております。看護師×エコー技術の進化で、看護の発展と質の向上に繋がることを期待しています。
テクノロジーとは、科学技術や工学、またはそれらを応用した製品やシステムを指す言葉です。今日、あらゆる分野で技術革新が進んでおり、社会全体の進歩を推し進める駆動力になっているといえるでしょう。ある分野で発明されたテクノロジーが他分野で大きな飛躍を遂げるといったことも珍しくはありません。それはニュー・テクノロジーがユニークな発想によって生み出されているからであり、その発想は分野を超えた普遍性を有するからでもあります。本シンポジウムでは、褥瘡分野で散見されるニュー・テクノロジーに焦点を当て、5人の演者にテクノロジー誕生の背景やその潜在的可能性についても語っていただきます。日常臨床に応用できるアイデアを発想する機会にしていただきたいと考えています。
栄養学の進歩を振り返ってみたい。最初は食事に関する栄養素の研究が端緒であったと考える。必要エネルギー量の算出法や各種の栄養素の適正量の解明によって人々の健康を支えることができるようになった。それを食事栄養学と呼びたいと思う。続いて、主に病院において疾病罹患時や手術期の栄養管理法が研究されるようになった。病態に応じた適正な栄養管理法が次々と生み出され、治癒率向上に貢献した。これを臨床栄養学と名付けよう。しかしながら、今日、褥瘡治療において、時に繰り返す褥瘡患者に遭遇することがある。そこで直面している栄養学的問題は、食事栄養学でも臨床栄養学でも解決できないことが多い。医療機関に入院する前の、あるいは退院後の社会生活を支えるという視点が欠落しているからであろう。「社会に栄養を」という視点で第三の栄養学、社会栄養学を提唱したい。当パネルディスカッションでは、社会栄養学的な実践をしている四者にご登壇いただく。日常の社会生活における栄養の重要性を考えるきっかけになればと考えている。
クリティカルパス、クリニカルパス(以下、パス)とは、ある疾患に対して入院から退院までに行なわれる検査や治療を経過日ごとに記載した診療計画表です。今日では、診療計画だけでなく医療の質を向上させるための道具としても機能しています。ただ、当学会が診療担当する褥瘡の領域においては、複数の疾患を有する患者が多く標準化が極めて難しいと考えられていました。最もパス化しにくい疾患と言えるでしょう。医療界におけるNew WAVESを渉猟し続けた結果、患者状態適応型パス(PCAPS)というイノベーションに出会いました。最も距離感がある褥瘡とパスの新結合、このNew WAVESによって、褥瘡治療のみならず、医療自体が新たな境地に踏み出していることを感じてください。 (座長:秋山和宏)
チームコンパス:
チームコンパスは品質工学の研究から生まれました。質の高い医療のためには、患者毎に最適化された、よりきめ細かな業務を実施する必要があります。チームコンパスは効率的なインターフェースで業務の効率改善を実現するとともに、きめ細やかに定義されたクリニカルパスを用いることで、医療の質の向上を目指す医療機関向けのソフトウェアサービスです。患者状態適用型パスを標準的に採用し、約800種類のクリニカルパスを用いて急性期の総合病院においても90%以上のパス適用率を実現することで、医療機関の業務の効率化と継続的な医療の質の改善を支援します。
皆様にとってセラピストはどのような存在だろうか?
本講演では、セラピストをリハビリテーションに主に携わる理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)としたい。
皆様に3つお伝えしたい。
1.”リハビリテーション”は筋トレや機能訓練以外に何ができるか?
リハビリテーションの真の意味は全人的な復権であり、その人らしい暮らしを達成するためには、セラピスト単独の支援では限界がある。自立支援をキーワードにチームとして対応することがポイントである。
2.セラピスト”だからできること”、”ならよりよくできること”、”もできること”をチームで考え、協働していくこと
褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)のリハビリテーションの項目では、褥瘡の治癒促進や予防として、電気刺激療法や車椅子クッション使用が推奨・提案されている。この他にも、セラピストはシーティング、マットレス選定、ポジショニング、入院中や住宅での生活環境設定等を担える。セラピストがチームの1人として褥瘡対策にどのように携わるか、その役割を考えたい。
3.褥瘡対策の新たな視点”持ち上げないケア”の可能性と取り組み
持ち上げないケアは自立支援の視点で対象者を捉え、移乗や体位変換などの際に力まかせに持ち上げることを減らすケアと考えている。具体的な取り組みと考えられる効果として、移乗用リフトやトランスファーボードの活用により、持ち上げ時のスキンテアの予防や不用意な皮膚張力発生による褥瘡の治癒遅延や悪化の予防がある。また、支援者の腰痛対策にも有効であり、支援の継続性の担保ができる。
褥瘡対策におけるリハビリテーション、セラピストの可能性をフロアの皆さんと共に考え、本講演を聴講していただいた後に”チームにセラピストを!”と各施設や事業所で声を上げてもらえるキッカケやヒントになれば幸いである。
教科書では褥瘡の好発部位の一つに「踵」が挙げられている。しかし、踵の褥瘡にケアを継続しても、なかなか治癒していかない経験をされた人は多いのではないだろうか。本当に褥瘡だろうか?と悩んだことでしょう。また病院では良好な状態となっても、在宅療養では介護力不足や、独居によるセルフマネジメントへの意欲の低下等が引き金となり、悪化や再発してしまう事例も多い。一方で、難渋事例であっても在宅療養を支援する医療、福祉チームでの目標の共有と協働により治癒や再発予防につながることも多々ある事を実感している。
足病の予防、治癒促進、重症化予防を図るためには、介入初期時は勿論、その後の経過において、下肢の創傷から個体要因、環境要因、精神的要因を含む情報をどれだけ得られるか、そしてその後に起き得る状態をイメージできるかが、足を守ることに重要だと考えている。目標を掲げ治癒促進を目指すが、同時にリスク要因についても常に意識してセスメントしていき、治癒に向かわない場合はどのように計画を修正するかまで、患者を中心とした多職種と共有していくことが必要であると思われる。
昨年、日本フットケア・足病医学会から「重症化予防のための足病診療ガイドライン」が発刊されており、「患者さんの歩行を守り、生活を護る」ための多角的な視点で構成され、患者中心の質の高い医療・看護の提供の在り様が示されている。
日本は高齢化社会を迎え糖尿病、動脈硬化症、慢性腎臓病(透析)、慢性静脈不全、膠原病などをベースとした「足病」の増加がみられている。また、足病の治療は様々な局面で必要とされ、関係する多職種連携が必須であり、療養場所や個別の社会背景が関連する。足病を起こさない、重症化させない知識とケアについて、皆さんと考える機会になればと思っている。
近年、低侵襲手術の普及でロボット支援下手術を含む内視鏡手術が主流になっている。その手術では手術台を高頭位や頭低位、傾斜させることで術野の視野や手術操作を行うスペースを確保する。褥瘡予防の観点では、この手術台操作で手術台と体幹にずれ・摩擦が生じるため、体圧だけでなくずれ・摩擦への対策が重要である。近年、医療技術の進歩によって高齢者が手術を受けることも多い。高齢者では、加齢が皮膚変化、皮膚の耐久性などに影響を与える褥瘡発生リスクを認めるだけでなく、高齢者は褥瘡発生要因である低栄養や病的骨突出、皮膚乾燥などを伴うことが多い。高齢による皮膚変化、耐久性の低下はスキン-テア発生率を高める。そこで、高齢者特有の褥瘡発生、スキン-テアに対して様々な予防策が必要である。
手術室では手術が安全・円滑に進むことが最優先であるため褥瘡対策が制限される。また、手術を安全に行うためにモニタリング器機を多く使用するが、これらの機器でも体位によっては医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)が発生する可能性が高い。
手術を受ける患者の特徴は様々であり、体位や術式も多岐に渡る。そのため、術中に起こる可能性があるイベントも予測してアセスメントを行うことが重要である。手術室で確実に褥瘡対策を実施できるのは麻酔導入後から手術開始までの間で、仰臥位の手術の場合は約15分と短時間である。したがって、計画的に対策を実施しなければならない。このように、手術室では病棟とは異なる状況で対策を講じる必要がある。手術室での対策は、体圧分散マットレス、強固な体位固定、多層性シリコンフォームドレッシングの貼付、体位固定時の置きなおし、用手的除圧、体温管理である。
本講演では、手術室での褥瘡、MDRPU、スキン-テアの現状と対策、課題について概説する。
在宅医療の普及において、薬局薬剤師が多職種と連携し、介入している例も増えてきたが、褥瘡患者に介入している薬剤師はまだ少ない。しかし、在宅褥瘡治療の多くは外用薬を中心に行われており、薬剤師の専門性が期待される分野だと考えている。なぜなら、外用薬に含まれる医薬品としての有効成分である主薬は外用薬の一部で、その他大部分は基剤が占めているからである。
褥瘡治癒においては、外用薬が直接創面に接触することから、主薬だけでなく基剤の役割も重要になってくる。愛知県 小林記念病院褥瘡ケアセンターの古田勝経氏は基剤を中心に考えた褥瘡・創傷治療である「FURUTA Methods」を提唱しており、外用薬を中心とした在宅褥瘡治療において有効であることを毎日の業務で実感している。
外用薬における褥瘡治療においては、薬剤の選択のみならず、薬剤が創面に留まるような塗布方法も重要である。2020年9月より改正施行された医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)では、薬剤師の役割として医薬品交付後のフォローが義務化されている。褥瘡治療においても、患者が使用している外用薬の効果を確認および評価し、医師をはじめとする多職種と共有することによって、褥瘡治療に関わることは薬剤師の責務と言える。
また、在宅褥瘡治療における薬局薬剤師の役割として、褥瘡治療に必要な栄養補助食品や、医療材料の供給がある。もともと薬局は医療提供施設という役割以外に小売業としての側面もあるのが特徴である。それを活用して褥瘡治療においても、必要な医療材料を正しい使用方法とともに供給することによって、患者や他職種から必要不可欠な存在となることができるであろう。
日本褥瘡学会では、褥瘡・創傷専門薬剤師を創設し、2023年より暫定認定が始まっている。薬剤師が在宅褥瘡治療において、どのように関わり、他職種と連携しているか、皆様にお伝えしたい。
わが国においては創傷治療の進歩は褥瘡治療とともに発展してきた。ここ30年間で開発された創傷治療薬品・医療機器には、創傷被覆材、成長因子製剤、NPWT、生物学的製材など数多くのものがある。
創傷治療法の概念も大きく変化してきた。創傷治療の近代化はWinterの湿潤環境理論に基づいた創傷被覆材が開発されたことに始まる。創傷を乾燥させるという考えから、創傷を密閉して湿潤を保つことで創傷治癒を促進するという概念に変わった。これは画期的なことであった。またちょうどこの時期にキズを消毒することから、水道水、生理食塩水で洗浄するというようにも変わった。2003年にはWound Bed Preparation(TIME)コンセプトが発表され、慢性創傷の世界的な標準治療概念となった。近年ではWound Bed Preparation と組み合わせてwound hygieneというコンセプトも浸透している。
医療機器に関しては、フィルム、ハイドロコロイド、フォーム、シリコンドレッシング、アルギン酸塩、銀含有ドレッシングなどの創傷被覆材が2000年代前半までに臨床で使用できるようになった。ちょうど褥瘡学会が創設された時期、WOCの増加とも重なって、褥瘡=創傷被覆材というイメージが浸透した。近年予防的ドレッシングもエビデンスが増え、まだ保険ではカバーされていないが浸透した感がある。2010年にNPWTが保険収載され2017年には洗浄機能付きのNPWTが臨床現場で使えるようになった。さらにここ数年でOASIS®、EpiFix®、Recell、多血漿板血漿PRP事承認されている。
薬剤では2000年代には、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)製剤、近年HGF製剤が臨床応用されている。
この講演では、過去の製品を含めて最新の創傷治療の視点で振り返り、キズのための新技術を褥瘡でどのように使用すべきかについて概説する。
そんな中、今回のテーマを「New WAVES」としました。創傷管理における湿潤環境によるイノベーションが起きてから久しく、各病院における褥瘡管理の進歩は目覚ましいものがあります。当学会員をはじめとする医療人たちの誠意努力によって、もはや大きな進歩は望めないとさえ思えるほどです。しかしながら、世の中は絶えず変化しています。広く目を転じてみれば、進歩の芽は至る所に潜在しているものです。今回の学術集会を企画するにあたり、新しい潮流を私なりに探索してみました。ポータブル・エコー、患者状態適応型パス、ICT、メタ・バース、ChatGPT、数々の新しい技術が目に留まりました。イノベーションは新結合とも訳されます。それらの一部を結びつけることによって、New WAVEを起こすことができると確信しています。